特殊車両通行許可は道路の構造を守り、円滑な交通を実現するための制度です。違反をした事業者に対してのデメリットは多数あります。これは事業者様が運送業を営むうえで、大きな足枷となりうるものです。制度を理解し健全な事業を営み、事業を適正化していきましょう。
取締まりについて
国道事務所による取締り
・取締り場所
国が管理する直轄国道上の指導取締基地や車両重量自動計測装置によって、特殊車両通行許可違反が発覚します。
指導取締基地で道路管理員と車両停止権限を持つ警察官が同時に取り締まっている場合があります。違反の内容によって警告書、措置命令書の交付、軽減措置等の実施がされます。
車両重量自動計測装置による場合、後日車両の使用者である運送事業者へ警告書等が送られます。許可内容のデータベースとオンラインで照合することが可能となり、取締りに利用される機会が増えています。繰り返し違反を行う運送事業者には呼び出しの行政指導が行われます。
・違反の種類
- 無許可
- 許可なし 許可未取得の場合はもちろん、更新未了の場合も無許可として扱われます。営業所を多く持つ運送事業者様は営業所間で車両を移動した場合には車番も変更されますので、車番変更申請をしなければ無許可の扱いになりますので注意が必要です。
- 車両諸元違反 有効な許可を取得しているものの、諸元(幅・全長・高さ・総重量など)を超過しているケースです。
- 通行経路違反 許可経路以外の経路を運航していた場合も無許可として扱われます。
- 許可証不携行 許可証を車内に備え付けてなく、取締り時に提示できなかった場合の違反です。また、備え付けていても許可証が提示できない場合も同様です。現在ではタブレットによる許可証の携行が可能です。書面の管理よりも整理がしやすいためおすすめです。
- 通行条件違反 誘導者の配置義務や夜間通行などの許可に付された条件を違反する通行は無許可と同じ扱いになります。
- 措置命令違反 積荷重が許可限度を超える場合など、措置命令が出されます。その場合はその場で、許可限度内の重量に収まるように積荷の軽減措置を求められます。クレーンやトレーラを派遣してもらうなど時間のロスやコストも高くつきます。また、措置命令に従わない場合は措置命令違反に該当します。
・警告・措置命令
特殊車両通行許可違反が発覚した場合、警告書や措置命令書が発出されます。
警告 違反の程度が軽微であり、措置命令処分を行う必要がないと認められる場合に警告(左下図)を行います。また、車両重量自動計測装置による取り締まりの場合は計測結果とともに警告書(右下図)が送付されます。(※図は国土交通省:道路法第47条の3に係る行政処分の基準について より引用)
措置命令 警告以外の場合において、重量等の軽減が可能な場合は軽減措置、分割等が不可能である場合は必要に応じ、通行中止等の措置を命ずるものです。措置命令の内容としては、徐行等、軽減措置、通行中止などがあります。警告は注意・指導だけに止まりましたが、措置命令では何らかの措置を実際に履行することが求められます。(※図は国土交通省:道路法第47条の3に係る行政処分の基準について より引用)
特殊車両通行許可の取り消し
道路管理者が付した条件に違反して特殊車両を通行させ、人の死亡又は重傷に係る交通事故若しくは道路の損壊に係る重大な交通事故を発生させたときなどは許可を取り消しされる場合があります。その場合は速やかに許可証を返還しなくてはなりません。(※図は国土交通省:道路法第47条の3に係る行政処分の基準について より引用)
告発
道路管理者が付した条件に違反して特殊車両を通行させ人の死亡又は重傷にかかる交通事故若しくは道路の損壊に係る重大な交通事故を発生させたときは使用者と事業者は告発される場合があります。
道路法違反の罰則
違反に対し下記のように罰則が設けられています。
- 100万円以下の罰金
- 一般的制限値違反・無許可(道路法104条第1項)
- 許可証不携帯(道路法104条第2項)
- 6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
- 橋梁等の制限違反(道路法第103条第4項)
- 措置命令違反(道路法第103条第5項)
※道路法第107条には法人両罰規定があります。これは行為者を罰する他、その法人等に対して罰則を適用するものです。
即時告発
悪質な事業者に対しては『違反事実』をもって告発を行う『即時告発』という制度があります。
- 無許可車両の場合
- 一般的制限値の2倍以上 例えば、一般的制限値が20tの場合は・・・20t×2=40t以上
- 特殊車両通行許可を受けている車両の場合
- 一般的制限値の2倍+(許可を受けた車両重量-一般的制限値) 例えば、一般的制限値が20t、許可を受けた総重量が35tの場合は・・・20t×2=40t(一般的制限値の2倍) 35t-20t=15t(許可を受けた車両重量-一般的制限値) 35t+15t=50t以上
※許可を受けた車両のほうが即時告発の基準が緩和されます。
NEXCOによる取り締まり
許可権限を持つ国土交通省だけでなく、高速道路を管理しているNEXCOも取締りを行っています。違反がETCコーポレートカードの大口多頻度割引に影響することになります。
『大口多頻度割引制度』・・・一般自動車よりも高額な大型車通行料金を多頻度に渡って利用する運送事業者に対して高速道路利用料が大きく割引される制度です。これにより運送事業者は月に数百万円単位から大手では年間数億単位の恩恵を受けることもできます。
特殊車両車両通行許可違反が及ぼす大口多頻度割引への影響
高速道路上で特殊車両通行許可違反が発覚し、累積点数が増加すると大口多頻度割引制度において割引停止、利用停止などの措置を受けます。また、平成29年4月より下記のように厳格化されました。
- 違反点数の累積期間が2年間に拡大
- 指導警告以上で必ず3点以上の違反点が加算
- 即時抗告をもって、割引停止
特殊車両通行許可違反が及ぼす事業協同組合への影響
事業協同組合には特殊車両通行許可違反に関し、連帯責任が及ぶしくみになっていますので、組合員である法人の1社でも多くの違反を犯せば、組合員全体に不利益が生じることになります。
各種ペナルティ
- 講習会呼び出し等・・・30点 特車許可違反を行った組合員に対し、NEXCOから再発防止等を内容とした講習会に呼ばれ、指導されます。
- 一部割引停止(1か月間)・・・60点 違反を行った組合員に所属する車両に対し大口・多頻度割引が受けられなくなります。
- 一部割引停止(2か月間)・・・90点
- 一部利用停止(2か月間)・・・120点 ETCコーポレートカードが利用できなくなりますので、ETCコーポレートカード以外のETCカードを使用するか、現金払いによりゲートを通過することになります。
- 全部割引停止(1年以内)・・・一部割引停止期間中に新たな違反の累積点数が『1か月間に10点以上』になる場合が対象です。
- 全部利用停止(1年以内)・・・全部割引停止期間中に、その期間中における新たな違反の累積点数が『1か月間に10点』以上になる場合が対象です。